コンビニ自販機で電子マネーが使えない理由
近年、コンビニ自販機と呼ばれる、コンビニのブランドを付した自動販売機が増えてきている。また、それ以外であっても、パンや菓子などを販売する自販機が室内を中心に多くある。
しかし、これらの自販機で、電子マネーに対応している機種は皆無である。なぜ電子マネーに対応しないのか。単に事業者側の都合なのか、あるいは構造上対応できないのか。これらについてみていく。
コンビニ自販機の販売方法
まず、コンビニ自販機はどのように販売しているのかについてみていく。
多くのコンビニ自販機は、前面がガラスになっており、販売商品が外から見えるようになっている。販売商品は、スパイラル状の金具に挟まれているか、またはベルトの上に乗せられている。これにより、利用者は購入する商品の現物を確認することができる。また、売り切れの際は商品自体が存在しなくなる。
購入方法だが、まず、利用者は商品を選ぶ。次に、お金を入れる。この時、まれにお金が入らない場合があるが、その際に販売中ランプが消えていれば自販機は利用できない。お金を入れた後、商品に付けられている番号を自販機のテンキーで入力する。入力後に、購入ボタンを押せば、自販機が商品を搬出する動作を行う。この動作は利用者も確認することができる。搬出が完了した後、商品とおつりを取り出す。なお、まれに商品を選んでも搬出動作を行わない場合がある。この時は、投入金が不足しているか、または商品が販売できない状態(賞味期限切れや、売り切れなど)となっている。お金が足りないようであれば追加し、足りているのに購入できない場合はほかの商品を選ぶか、キャンセルする。
このように、利用方法自体は一般の飲料自販機と変わらないが、商品の選び方が通常の自販機とは異なる。また、目視で売り切れかどうかは判別できるが、機械がそれを認識しているかは購入してみるまでわからないといった点も異なる(一般の飲料自販機は、売り切れであれば[売り切れ]ランプが商品ボタンに点灯(通常は常時点灯だが、まれにお金を入れるまで点灯しない自販機もある。これについての詳細は略)するため、機械が売り切れであると認識しているかは容易にわかる)。
商品が出ない場合はどうなるか
一般の飲料自販機は、信頼性が高い仕組みを使っているため、商品が出ないなどの販売トラブルは非常に少ない。筆者においても、過去に1度大量の商品が出たところを目撃したことがある以外、商品が出ないなどといったトラブルを目撃したことはない(コインづまりや紙幣づまりなどは何回が経験しているが)。しかし、コンビニ自販機は、その構造上商品が出ないトラブルが一般の飲料自販機に比べて発生しやすい。これは、形状がおおむね一定である飲料に比べて、コンビニ自販機で扱う商品は形状が一定ではない(袋状の商品もある)という点がある。また、搬出機構の違いもトラブルが起きやすい要因である(詳細についてはここでは略)。
また、コンビニ自販機においては、誤って売り切れの商品を選択(先述のように、売り切れかは目視で確認はできるが、機械が認識していない場合に誤って選択した場合は売り切れであってもそのまま販売動作をしてしまう)してしまうなど、人為的な販売トラブルも起こりうる。
これらの販売トラブルが起こった際、商品代金が課金されてしまうと、利用者は損失を被る。また、場合によっては利用者が自販機の設置事業者(自販機オペレータや、自販機が設置されている施設の受付など)に返金を要求することもある。返金が要求された場合は、自販機の設置事業者は返金を行うため自販機の設置場所に出向いて自販機の状態を確認し、利用者へ返金する。場合によっては状況の確認に向かうまでの間自販機を利用できないように利用者などに対して"中止"などの張り紙を貼るよう要求することもある。このように、1度販売トラブルが起こり利用者に損失が出るような事態になると、自販機事業者は多大な負担がかかることが想定される。
そのため、最近のコンビニ自販機においては、商品が正しく搬出されたかをセンサーで識別し、万が一正しく搬出されていないこと(商品が出てきたことが認識されないなど)が確認された場合は、商品代金を課金しない(返金する)などの対応が行われる。また、該当カラムに対して、補充(前面扉の開閉などで補充と認識されることが多い)が行われるまでの間、販売を停止するといった処置が行われることもある。これにより、自販機業者は返金対応に追われることなく、本来の業務(補充など)に専念することができる。
電子マネーでの自販機の利用方法
ここで、電子マネー(ICカード形の電子マネー)で自販機の商品を購入する場合についてみてみる。
現金で購入する場合は、先述したように、先に現金を投入してから、商品を選択する。これは、ほとんどの自販機において共通する事項である。
対して、電子マネーで購入する場合は、先に商品を選択してから、電子マネーを読み取らせる。これは、課金額が商品を選択するまで決定できないこと、および課金額を動的に変更するのが困難である(電子マネーを読み取らせた段階で電子マネー内の残高を書き換える必要があるため。多くの場合残高等は電子マネーの媒体内にも記録されているので、動的に変更するには電子マネー媒体を変更が生じる可能性のある間常時読み書き可能な状態にする必要がある)ことが理由である。また、電子マネーからの引き落としは、電子マネーを読み取らせたときに行われる。なお、電子マネーを先に読み取らせると残高が表示されるが、その後に商品を選択しても再度電子マネーを読み取らせない限り購入はできない。
このように、現金は返却が容易であることなどから、先に投入させる(これによりお金が足りているかの確認もできる)が、電子マネーの場合は先述の通り動的な変更が困難なので後で読み取らせる(残高の確認と課金を同時に行う)ことになっている。
なぜ、電子マネーが使えないのか
コンビニ自販機で電子マネーが使用できないのはなぜか。この答えは、先述した課金方式にある。
コンビニ自販機の場合、投入金が足りていることを確認して、販売動作を行う。その後、商品が出たことを確認してから課金を行う。これは、先述したように商品が出ないというトラブル回避のために行っているものである。
では、電子マネーで同様の販売動作はできるのか。先述のように、大半の電子マネーは、ユーザーがIC読み取り機にタッチし、ICカード内に書きこまれている残高を減らすことによって課金を行っている。ここで、上記のようなコンビニ自販機の販売動作を行う場合、商品を選択してから商品が出る、あるいは商品詰まりや空売りなどを検知して売り切れ動作を行うまでの間、電子マネーの媒体との通信を継続していなければならない。もし、商品が出る前に電子マネーとの通信が何らかの理由で途絶えてしまった場合、商品は落ちてきたにもかかわらず課金はされないといった状態になってしまう。
逆に、商品を選んだ時点で課金した場合、その後商品が出てこないなどの事態になると返金をする必要がある。この時、電子マネーの仕様によっては無駄な履歴が残る場合や、そもそも現金でしか返金できない場合がある。後者の場合、意図的に売り切れカラムを購入することで電子マネー残高を現金化できるといった問題にもなりうる。
以上のことから、コンビニ自販機における、商品が出てこなかった際の返金処理に難点があるため、電子マネーの導入が進まないといった現状がある。もし、問題点を克服(売り切れ時に返金できる、あるいは絶対に商品が詰まらないようにし、売り切れも選択前に検知できるようにするか、あるいは販売動作後に購入キャンセルをした際、商品を元の位置に戻して販売が再度できるようになる)できるようになれば、電子マネーの導入が進むと考えられる。
追伸
8か月近くもの間下書き状態(これを描いている時点でのタイムスタンプが2013/10/10 08:49となっている)だった記事をようやく公開にしました。もともとはとあるコンビニ自販機の登場を受けて書き始めた記事ですが、その自販機はなぜかコンビニの名前を外していたりします。ちなみに、アイスクリーム自販機や一部の飲料自販機など、コンビニ自販機(パンや菓子などを販売する自販機)以外でもこれと同じような販売機構となっているものもあります。